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はじめに
リハビリテーションは,常に社会とともにある.いい換えれば,社会が変転を示す度ごとに,リハビリテーションの在り方が問われてきたものである.それは,その時どきにリハビリテーションの焦点が変えられてきたことによっても判る.
焦点が変わるということは,次から次へいろいろな言葉が飛び交い拡まり,その時の社会のニーズに合った標語や旗印がつくられ育てられてきたことを意味する.リハビリテーションの原義が十分浸透していたなら,特別にこのような動きを必要としてはいなかったかもしれない.したがって,言葉の移り変わりがあったということは,ある面での進歩があったといえる一方,他方では正しく消化され定着してはいないという面のあることをも示している.
二昔ほど前を振り返ってみても,幾多の言葉がこれまで口の端にのぼってきている.パラリンピック当時には,療養所の患者が世間の目に触れるようになり,車椅子,障害者,あるいはリハビリテーションそれ自体が合い言葉のように使われていた.その後も,数かずの耳新しい訳語が紹介され現在に至っているが,いまだに真の意味を伴って定着したといい難い場面を見受けるのは残念なことである.
リハビリテーションが多面性をもち,社会によって形を変えるため,目的や手段や混乱を生じさせた傾向があった.そのようなひずみが露呈する都度,新しいモットーが生まれてきたのである.
社会の変転が続く限り,そして人びとの胸にリハビリテーションの理念が定着する日まで,浮かび消える言葉は後を絶たないであろう.ここ数年間に強調されているものを挙げてみれば,障害者の権利宣言,完全参加と平等,寝たきり老人,生き甲斐,介護つき自立,メインストリーミング,地域リハビリテーション等々である.どれを取っても等閑視し得ない命題ばかりである.そして今,Third-Party Handicapped,Software,Rehabilitation Partnershipの蠢動を控えていると思われる.
つまり,リハビリテーションが一部の対象者に向けて行われるものでなく,すべての人の課題であるというのが,現在最も要求されるところであろう.QOLもその例に洩れない.障害者であろうがなかろうが,生活の質的向上を目指すことが大切であって,それはそのままリハビリテーションの目標とも直結するのである.
以下,QOLの意義についていささか考察し,なぜ今QOLかを論じ,リハビリテーションとの関わりを検討したい.
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