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脊髄損傷に関しては本誌第1巻で3号にわたる大特集を行なった.その時ほとんどの項目は網羅されてしまい余す所は無いかのごとく思えたが,数多くのテーマがこの特集の中にとりあげられ,そのいずれもが興味深いものであることを示している.話題を拾うならば,本多氏の労災における問題点では,労災の中でも脊髄損傷が大変重要な位置にあることを示し,労災貴族という語もよく理解できる.さらに同論文の中で「単に外見上の機能障害のみを考えた社会復帰への指導がどんなにそらぞらしいものか,あらためて認識しないといけない.」と述べられており,心に響く名言であると思う.赤津氏の疫学の論文は氏の脊髄損傷に関する知識のすばらしさをよく示している.多くの資料を駆使してまとめあげられており勉強させていただいた.他に新宮氏の合併症の論文中,褥創に関するものは83名の多数にわたる患者の調査結果であり労作である.収尿器に関する宮崎氏と橋倉氏の報告,中新井氏の外括約筋電気刺激装置に関するもの,等は今後も注目されて行くであろう.須藤氏の脊髄電位に関するレビューは,このテーマに興味を持つ人達にいくつかの指針を示すものと思われる.
巻頭言の中で児玉氏は1つの問題提起とも受け取れる発言をしておられる.つまり,リハビリテーション関係職の人達には生涯の夢が必要であり,「たった一度だけの人生をその仕事にかけて悔いのないだけの魅力が必要だ」.文中にある高木教授や児玉氏自身もその魅力に取りつかれ,人生をこの方面にかけて来られた方達だけに考えさせられた.大きな夢があり未来もあり可能性もあるかたわらで,実際に仕事をしてみると,仕事自体は非常にきびしく,結果も思わしくなく,報われない思いをする事が多い.現実の姿にくじけること無く,夢に向って実ることの少ない努力をつづけるためには強靱な意志の力を必要とし,それが私達にとり不可欠なものの1つではなかろうか.
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