書評
梶 龍兒(総監修),木村彰男(編)「シリーズ ボツリヌス治療の実際 痙縮のボツリヌス治療―脳卒中リハビリテーションを中心に」
佐伯 覚
1
1産業医科大学リハビリテーション医学講座
pp.323
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102028
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本書は実にタイムリーな書である.2010年10月にボツリヌス治療が,脳卒中患者の上肢および下肢の痙縮にも保険適応が拡大され認可されたが,その直後に発行されたからである.ボツリヌス治療は「脳卒中治療ガイドライン2009」において,グレードAと推奨のレベルが最も高く位置づけられている痙縮治療である.海外ではすでに脳卒中の痙縮に対して積極的に使用され,その有効性が確認されている.一方,わが国では,1996年ボツリヌス治療が眼𥇥痙攣に対して初めて保険適応が認められたものの,脳卒中の痙縮に対しては保険適応が長期にわたって認められなかったという経緯がある.
本書は本分野のエキスパートが執筆している.脳卒中リハビリテーションの視点から,痙縮の病態生理,診断,治療を概観し,ボツリヌス治療を脳卒中の痙縮の治療法の一つとして,同治療の適応,メリット,デメリットに関して余すところなく述べてある.ボツリヌス治療だけでなく他の重要な治療法―薬物療法,物理療法,装具療法,フェノールブロック―についての内容も詳述されており,ボツリヌス治療とリハビリテーションの併用の重要性が繰り返し強調されている.
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