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はじめに
リハビリテーションにおいて歩行訓練は最も広く行われている治療法の一つである.歩行運動における呼吸循環応答を理解することは,歩行運動を理論的に体系づけるだけでなく,安全に歩行訓練を施行するうえでも非常に重要である.そこで今回は,歩行運動におけるエネルギー代謝とそのエネルギー消費に伴う呼吸循環応答という観点から述べることとする.
歩行時のエネルギー代謝
ヒトにおける歩行の特徴は言うまでもなく交互2足歩行である.そして,歩行を効率的に行うということは,生体の重心(第1仙椎から第3仙椎の上縁の間正中線上)の上下左右への動きを最小限にしながら前方に移動させることである.
1.エネルギー代謝
運動に伴うエネルギー代謝はMETsなどにより表される.METsは,運動時の酸素摂取量を安静時の酸素摂取量で割ったものであり,安静座位時のMETsが1であり,3.5ml/kg/minの酸素消費に相当する.
2.エネルギー消費の測定
運動時に必要とされるエネルギーの発生源は,アデノシン三リン酸(ATP),クレアチンリン酸(CP),グルコースの嫌気性代謝(Embden-Myerhof経路)とクエン酸回路で発生するエネルギーである.しかし,前二者で得られるエネルギー量は限られたもの(1分子のグルコースで4ATP)であり,数秒間の運動でほとんど消費されてしまう.必要なエネルギーの大部分はグルコースの代謝,特に,クエン酸回路による酸化反応を起こすときに発生する(1分子のグルコースで38ATP).平均的な食物摂取を行っている場合,酸素消費1l当たり約4.83kcalのエネルギーが発生するため,一定時間内にある仕事を行ったときの酸素消費量を測定して,間接的にエネルギー消費を知ることができる.安静臥位と比べて自然歩行では3~4 METsのエネルギーが消費されることになる.
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