連載 再考します 臨床の素朴な疑問・第9回
野球肘は運動療法で発生を減少させることが可能か?
坂田 淳
1
Jun SAKATA
1
1トヨタ記念病院リハビリテーション科
pp.1012-1013
発行日 2021年9月15日
Published Date 2021/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202431
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野球肘検診により野球肘は減らせるのか?
野球競技では,肩・肘の傷害が多く発生する1).Athlete exposure(AE)という,1人の選手が1回の練習または試合を行うことを単位とした数値で年代別の投球障害発生率について算出したところ,学童期野球選手の肩傷害発生率が0.6/1,000 AEs,肘傷害発生率は1.5/1,000 AEsであった2).中学生から高校生までの野球選手を対象とした報告では,肩傷害発生率が1.5/1,000 AEs,肘傷害発生率は1.0/1,000 AEsとその発生率は逆転する3).
骨端線閉鎖前に生じる代表的な野球肘として,肘外側に生じる上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下,肘外側障害)と肘内側に生じる上腕骨内側上顆下端障害(以下,肘内側障害)がある.肘外側障害の有病率は地域や年代,競技レベルによって2.2〜5%と報告により異なるものの4〜7),発生率は2%程度8)と低い.その発生を予防するのは現実的でなく,全国に広まった野球肘検診のほとんどは肘外側障害の早期発見・早期治療,つまり二次予防に主眼が置かれている.
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