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はじめに
わが国の総出生数の減少に対し,出生体重2,500g未満の低出生体重児の出生数は逆に増加している.このようなハイリスク児の割合の増加にもかかわらず,新生児死亡率は減少を続けており,近年の新生児医療の進歩は著しいと言える(表1)1).しかし救命された極低出生体重児の長期予後については,まだまだ改善すべき点が多く存在し2),長期的にリハビリテーションの対象となることも多い.
本稿のテーマである生活指導とは,低出生体重児と両親にとっては育児支援そのものである.新生児の育児と言えば,主に「ミルク,オムツ,沐浴,睡眠,安全な環境」であり,本来,家族主体で行われる.しかし,低出生体重児として出生すると,まず救命のための医療が必要となり,neonatal intensive care unit(NICU)という特殊環境で生活がスタートする.保育器のなかのわが子を見つめながらも,親としての無力感や後悔,将来に対する不安を味わいがちである.このように思い描いてきた出産や育児と異なるスタートを切った家族に対し,関係性を構築し,養育者として自信を持てるように支援することが重要である.
低出生体重児は,退院後も発育・発達のみならずさまざまな問題を抱えやすいため,NICU入院中だけでなく,退院後の生活支援や地域連携も重要である.有効なフォローアップを行うには,小児科医を中心に,小児神経科医,心理士,保健師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,眼科医,歯科医,医療ソーシャルワーカーなどによるフォローアップチームが必要であり,症例により,必要な専門医との連携体制をつくる.また,地域の病院,小児科医,療育センター,保健所・保健センター,訪問看護ステーションなどとの連携,さらには教育機関との連携も不可欠である3).
出生体重1,500g未満の極低出生体重児は,ハイリスク児フォローアップ研究会を中心に,小学3年生まで定期的にフォローするプロトコルが作成されている4).また,周産期母子医療センターネットワーク(Neonatal Research Network Database in Japan:NRN)により,そのプロトコルをもとにしたresearch follow-upシステムが構築されている5).このプロトコルが実施可能な施設は,2004年の時点では10施設にすぎなかったが,2012年には65施設まで増加している6).統一プロトコルによる全国多施設でのデータは,今後,理学療法の予後予測に有効と考えられる.
当院ではリハビリテーションが必要な低出生体重児に対し,NICUより理学療法士が介入し,発達評価と支援を行っている.退院前には,入院中の評価をもとにスクリーニングを行い,外来での継続の有無を判断する.本稿では,NICUという特殊環境でスタートを切った家族に対する育児支援と,そのなかでの理学療法士の役割についてまとめた.
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