講座 理学療法の倫理・2
ターミナルケアの倫理
岡本 珠代
1
Okamoto Tamayo
1
1広島県立保健福祉大学
pp.877-882
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106162
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1.はじめに
前回はインフォームド・コンセント(IC)を中心とするリハビリテーション・ケアの倫理的あり方を考察した.今回は,ICが必ずしも字義どおりには実現できない対象者の医療における倫理を考える.ターミナル期は通常がんなどの末期状態を指すが,ここでは後期高齢者を対象とするケアも含めて考える.ICはクライエントの自律の確立が前提となるが,高齢であったり,ターミナル期にある人々は,判断力や行動力の外見的な衰えから,ICの適用範囲から不当にはずされてしまうことがある.また,リハビリテーション・ニーズも無視されてしまいがちである.一般の人々を支配している,「ターミナル期が人生行路の諸段階の中で生命の下降線をたどる過程の終着点にすぎず,人としての活動や作業ニーズも極小化へ向かうだけである」という考えは誤解である.そのような観点がケアを規定すると,クライエント本人のふるまいも周囲の人の行動も貧しくする.どんな時期にあっても,正当な人間観と人権の確認が必要であるが,対象者が人権を主張したり抗議できないときにこそ,その人の尊厳の尊重を第一に考えるケアが求められる.その認識から痴呆期,ターミナル期のケアを見直すと,新しいリハビリテーション倫理の視点が得られるのではないかと思われる.
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