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1.はじめに
「入浴日もリハビリあるんですか?」「入浴日には中野さんの顔見たくないなぁ(結構マジな顔)」と介護員にいわれ「何で…」と戸惑い,訓練室に向かう階段で「もうダメかなぁ」と孤独感・挫折感を幾度と味わったことか…….
老人保健施設(老健)は急速に増加する高齢者に対する保健福祉施策の1つとして,1988年4月より制度が本格的に施行され,来年で10年を迎える.老健はリハビリテーション(リハビリ)を行い家庭復帰を支援する施設として誕生し,最近では一般の人々にも「老健=リハビリ」という認識がだいぶ広がってきている.また,老健は理学療法士(PT),作業療法士(OT)の配置を法律で義務づけた施設であり,PT,OTに対する期待が大きいといえる.現在,新ゴールドプランの達成に向け,老健が物凄い勢いで開設され,それに伴い常勤するPT,OTも増加している.これは特にPTにおいて顕著である.しかし,老健実地指導において,PT,OTの配置不備を指導されている施設や地域によってはPT,OTを確保できず,開設がスムーズにいかない施設も多い.
理学療法白書1995にPTの進出が進まない理由として「老健での業務を行うには経験が必要である」と記されている.また様々な雑誌において,老健に勤めるPT,OTは「かなりの経験と高度な知識を要求される」とも述べられている.私は,卒業後1年間病院でのリハビリ業務に携わり,「地域に興味があった」という理由で,その後老健に就職した.老健に就職するという話をすると,みんな口を揃えて「まだ早いよ」「大変だよ」「もう一度考え直したほうがいいよ」と否定的な意見が多かった.「そんなに大変なのかなぁ」と何も知らずに私はこの世界に飛び込んだ.
本稿では,十分な経験も高度な知識もないPTが,日々奮闘しながら行ってきた3年間の業務を振り返り,ひとり職場でのPTの取り組みについて私の考えを述べたい.
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