1ページ講座 生理学的診断・5
心電図・1 基本的事項:正常心電図
吉村 浩
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1七沢リハビリテーション病院循環器科
pp.337
発行日 1994年5月15日
Published Date 1994/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104002
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心電図とは,体表面より心臓の電気現象を記録したものである.正常の心臓の電気的興奮は,図1の如く,自動能をもつ洞結節①の興奮(1分間60~100回)が心房②に伝わり,心房興奮となり,(心電図上のP波)房室結節③(ヨーロッパでは“田原の結節”と記載され,病理学者田原淳(1873~1952)の業績である.)を通り,His束④を経て,右心室に向かう右脚⑤,左心室に向かう左脚⑥(左脚は,臨床的に,左脚前枝,後枝に分けられる.)に分かれ,Purkinje線維⑦(心室内面を網のように覆う.)を通り,心室⑧に伝わる.心室の電気的興奮が,心電図上のQRS波である.上記③~⑦は,心電図上では興奮として記録されず,基線のままである.
心電図記録は,ことわりが無ければ,1秒間25mmの速度で記録され,各棘波の高さ(電位)は1cmが1mVである.図2に正常心電図を示す.各棘波は,順にP,Q,R,S,T波と呼ばれる.Q,R,S波は,まとめてQRS波と言い(Qは下向き,Rは上向き,Sは下向きの興奮),心室興奮(右心室と左心室の興奮の始まりから終わり)を表し,その幅(心室興奮時間)は,0.06~0.08秒である.PQ時間(P波の始まりからQ波の始まりまで)は,前述の如く,房室伝導時間を表し,0.16~0.20秒である.T波は心臓の再分極過程を表し,QRS波の向きと,通常一致する.
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