プログレス
MRSを用いた筋代謝・2
吉川 宏起
1
1関東労災病院放射線科
pp.557
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103806
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3.ミオパチーのMRS(magnetic resonance spectroscopy)
解糖系の酵素異常を呈する糖原病やミトコンドリアの呼吸鎖酵素の異常を呈するミトコンドリアミオパチーなどを対象とする31P-MRSの臨床応用が行なわれている.
図2に糖原病Ⅲ型に分類されるCori病症例の31P-MRSを示す.Cori病はDebrancher酵素すなわちアミロ-1,6-グリコシダーゼ欠損による糖代謝異常が原因で生じる遺伝性疾患(常染色体劣性遺伝)である.エルゴメーターで25W/3分間の下肢運動を負荷した後の31P-MRSでは,健常者においては1,2分後に回復しているPi(無機リン)/PCr(リン酸クレアチン)比の回復が遅延し,健常者と比較しても高値を示している.またPiの左側への偏位が示すPHの低下は健常者と比較して軽度であった.これは酵素欠損のために生じるグリコゲノリシスの解糖系のブロックによるもので,好気性あるいは嫌気性両者の条件下でも運動負荷時に解糖系が十分に働かず,ATP(アデノシン3リン酸)の供給が不十分であることを示している.
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