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Ⅰ.初めに
高齢化社会を迎え,21世紀には65歳以上の人口が,2000万人を超えると言われている.高齢者には,明らかな疾患と言えないまでも何らかの身体生理機能低下を有するものが多い.今後,理学療法の現場においてもこれらの恒常性機能低下を伴う高齢者の運動機能や身体活動能力の評価および体力維持増強訓練を行なう機会は多くなるものと思われる.
Curetonは体力を身体適性(physical fitness)と運動適性(motor fitness)とに分類している.physical fitnessとは,性,年齢,生活環境など各種の条件にそれぞれの能力が適合している状態と解釈されている.また名取らは体力を,外部環境からくる働きかけ(ストレッサー)に対して人間の生命を生存させるための防衛体力と,積極的に外界に向かって働きかける行動体力とに分けている.スポーツマンや活動的な壮年期の人々には,この行動体力の要素がより重要な意味をもつが,高齢者の身体機能に関しては防衛体力維持のレベルが最低限確保されることが目標となる.中原らは,現代に必要な体力の模型図(図1)により人間の生理機能の統合された防衛体力の維持を挙げている1,2).筋力の要素はこの頂点,すなわちもっとも基礎的な部分であり,また行動の発現器官として重要なものと考えられている.
加齢に伴って身体諸機能にはさまざまな変化が表れてくる,加齢変化を停止させることは不可能であるが,生理機能の低下速度を遅くし,身体機能の維持を図る試みは必要かつ不可欠のものである.
本稿では,中高年者の健康づくり活動を通じて高齡者の筋力増強プログラムの効果とリスクファクターとについて述べる.
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