特集 認知運動療法の臨床アプローチと効果
症例報告:脳性麻痺の新生児・乳幼児からの認知運動療法
浅野 大喜
1
Asano Daiki
1
1日本バプテスト病院
pp.297-302
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101149
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はじめに
ヒトの新生児は,出生後早期から環境に適応するための様々な能力を持ち,能動的に外界を探索する存在として一般的にも認識されるようになってきた1,2).しかし,小児の発達リハビリテーションにおいては,児の主観的な部分ではなく外部観察を評価・治療の中心に据えたアプローチが主流となっているのが現状である.また近年では,発達をシステムとして捉えるシステム理論が主張されてはいるものの3,4),治療それ自体がシステムモデルに則っているものはほとんどない.
一方,認知運動療法は,運動の発現・変化をシステムとしての自己組織化の創発と捉えるだけでなく,システムの下位要素として意図・知覚・注意・記憶・判断・予測といった認知的側面を重要視し,それを活性化(学習)していくことを目的とする5).つまり,目標とする運動・動作を学習させるのではなく,その運動が創発するための準備状態を作り出すことを目的とする6).また,対象児が学習していく過程において,他者(セラピスト)の役割を重要視するのも特徴の1つである7).
本稿では,従来の出生後早期からの小児発達リハビリテーションと小児認知運動療法との相違について解説し,脳性麻痺の新生児・乳幼児期からの認知運動療法の実際を症例とともに紹介する.
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