症例報告
重症心不全により補助人工心臓を装着した11歳男児の理学療法―プログラム実施上の留意点
天尾 理恵
1
Amao Rie
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
キーワード:
補助人工心臓
,
理学療法
,
重症心不全
Keyword:
補助人工心臓
,
理学療法
,
重症心不全
pp.165-169
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100652
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はじめに
わが国では1997年10月に「臓器の移植に関する法律」が施行され,2005年5月現在,小児2例を含む27例の心臓移植が行われている1,2).年間移植件数は増加傾向にあるが,年間約2,000例の心臓移植が行われている米国に比べると,ドナーの少なさは歴然としており,米国における移植待機期間が約60日であるのに対し,日本は650日を越えている2,3).
また日本では,小児に関しては6歳未満の脳死判定基準がないこと,15歳未満の臓器提供の意思が認められていないことから,心臓移植の機会は極めて少ないのが現状である4).このような背景の中で,小児の重症心不全患者は海外での移植に望みをつなげるケースが少なくなく,その数は年々漸増する傾向にある.
本邦における重症心不全患者の心臓移植待機期間は長期にわたるのが現状であり,重症心不全患者の補助循環治療の1つである補助人工心臓(ventricular assist system:VAS)が心移植へのbridge therapyとして注目されている.2005年6月現在,日本臓器移植ネットワークに登録された小児症例は15例,うち9例がVASを装着しており,6例が海外渡航による移植を受けている2).
当院では2005年9月現在,8例の左室補助人工心臓(left ventricular assist system:LVAS)装着患者の理学療法を実施してきた.今回,拡張型心筋症により重症心不全を呈し,LVASを装着した11歳男児の理学療法を実施するにあたり,小児であることを念頭に置いた理学療法プログラムの立案やリスク管理など,留意を要した点を以下に報告する.
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