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はじめに
介護保険制度の導入から5年が経過し,この間に要介護認定者数は上昇を続け,2000年4月末に218万人であった認定者が2004年8月末には400万人となり,わずか4年4か月間で約83%の上昇が認められる.この中でも,比較的障害が軽度な要支援,要介護1の認定者数の上昇が著しく,要支援が119%,要介護1では135%の増加が認められる(図1).これは,介護保険制度が広く認知された結果であり,介護を必要とする高齢者に対するサービス供給の体制が整ったことを示唆する一方で,このまま要介護認定者数が上昇し続ければ,財政的に介護保険制度の存続が困難になると懸念されている.
このような背景から,要介護状態に陥ることを予防する,あるいは要介護度を軽減するための介護予防事業の重要性が認知されるようになってきた.介護予防とは高齢者が要介護状態に陥ることなく生き生きとした生活を送れるように援助することであり,現状においては対象や方法についての見解は一致しておらず,各自治体が独自の判断で実施している状況にある.
介護予防のターゲットを考えるために,高齢者が要介護状態に陥った原因をみると,高齢による衰弱,転倒・骨折,痴呆,関節疾患が過半数を占め,生活習慣病のような重大な疾病以外の原因によるところが大きい1)(図2).これらは高齢期において徐々に顕在化する諸症状であり,老年症候群と呼ばれる.介護予防あるいは高齢者リハビリテーションを効果的にするためには,老年症候群の予防に焦点をあてた取り組みをする必要があると考えられる.
要介護状態の大きな原因である高齢による衰弱や転倒は下肢筋力低下の影響を受けるために,介護予防事業において筋力増強運動が高齢者に対して広く実施されるようになってきている.本稿では,高齢者に対する筋力増強運動によるトレーニング効果をまとめ,理学療法士が果たすべき役割について提案する.
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