増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
2.検査の実際と症例の解釈
4)血管系検査
A.検査法
(1)トロンボモジュリン
田原 千枝子
1
1帝京大学医学部第一内科
pp.311-314
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906541
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■トロンボモジュリンの作用1)
トロンボモジュリンは血管内皮の細胞膜を構成する糖蛋白で,血管が持つ強い抗血栓作用の一面を担う物質として,最近,注目を浴びている.トロンボモジュリンはトロンビンと高い親和性を持ち,両者は一対一の複合体を形成するが,トロンボモジュリンと結合したトロンビンはフィブリノゲンに対する凝固活性を失うと同時に,ビタミンK依存性凝固因子であるプロテインCを活性化するようになる.トロンビンは単独でもプロテインCを活性化するが,トロンボモジュリンと複合体を形成したトロンビンは2,000倍も強いプロテインC活性化作用を現すようになる.活性化プロテインCは活性化凝固第V因子(F. V),第VIII因子(F. VIII)(それぞれF. Va,F. VIII a)を分解して失活化させ,凝固系のインヒビターとみなされる(図144).
凝固系の活性化によって形成されたトロンビンは本来,凝固を遂行する因子であるのに,トロンボモジュリンと結合するとプロテインCを介して抗凝固作用を現すようになるので,この物質がトロンビン作用をmodulateすなわち調節する物質としてトロンボモジュリンと命名された.
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