増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
2.検査の実際と症例の解釈
3)線溶検査
B.症例呈示
(1)プラスミノゲン異常症
前川 久登
1
,
坂田 洋一
1
1自治医科大学血液医学研究部門止血血栓
pp.302-306
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906539
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はじめに
生体はその恒常性を保つために,数々の制御機構を生体内に有している.その一つとして,血液の量的な保持,および流動性の維持がある.この血液を失血から守るものの一つとして,血液凝固系がある.そして,いったん生じた止血栓を融解させ血液の流動性を維持する機序の一つとして,網内系細胞による貪食処理があり,さらにプラスミノゲン-プラスミンによる線維素溶解系(線溶系)が存在している.生体においては後者の線溶系が主要な役割を果たしているものと考えられており,この制御系になんらかの障害が生じた場合,生じた止血栓を融解する能力が低下するために,止血栓の進展を招いてしまう可能性があるのである.
血栓症をきたした原因として現在までにいくつかの分子異常症が報告されている1〜3).これらの異常症は日常の検査においてそう頻繁に遭遇するものではないが,知識として,また病態を理解するという意味においても認識しておく必要はあると考えうる.
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