増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
2.検査の実際と症例の解釈
1)血小板機能検査
A.検査法
(7)トロンボキサンB2
森田 育男
1
1東京医科歯科大学歯学部附属顎口腔総合研究施設顎口腔機能研究部門
pp.164-168
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906506
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■測定の意義
血小板で作られるトロンボキサン(TX)A2と血管内皮細胞で作られるプロスタサイクリン(PGI2)の陰陽バランスが,循環器系の恒常性維持にとって極めて大切であるということは,すでによく知られている.両物質の血中動態を知ることにより,循環器疾患の状態を診断したり,循環器系に働く薬剤の効果を判定したりしようとする試みがなされている.しかし,TXA2の水溶液中の半減期は,32.5±2.5秒,PGI2のそれは約5分と,ともに極めて短寿命で,このままの形では臨床への応用は不可能であった.そこで,それぞれの非酵素的分解産物で安定な,TXB2と6-ケトープロスタグランジン(PG)F1αがその測定マーカーとして用いられてきた.しかし,最近になりTXB2を生体内TXA2のマーカーとしていたことに対する疑問が生じてきた.それは,TXB2は生体内ではすぐに代謝されてしまい,血液中にはほとんど存在しないことが示されたことによる.
アスピリン投与後に100μgのTXB2を静脈注射し,その50分後の血中濃度を調べたところ,50pg/ml以下にまで低下していたが,アスピリン非投与後では2,300pg/mlと高値を示した1).このことは,①TXB2はヒト血液中にはほとんど存在していない,②採血時の刺激によりTXB2が産生される,ということを意味している.
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