病気のはなし
胆道閉鎖症
星野 健
1
1慶應義塾大学医学部外科学教室
pp.228-233
発行日 2002年3月1日
Published Date 2002/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906134
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新しい知見
胆道閉鎖症はしばしば「先天性胆道閉鎖症」という表現がされることがある.以前は本邦でもこの呼び名が通常であったが,この疾患の基礎的臨床的研究が進むにつれ,疾患の本態は「先天性」のものというよりもウイルス感染などの何らかの炎症によって後天的に惹起されるものという考えが主流になっている.したがって欧米でもcongenital biliary atresiaという言葉は使われず,単に「biliary atresia」と表記されるようになっている.
胆道閉鎖症患児の生存率は肝臓移植の導入により,飛躍的に向上した.本邦では主に生体部分肝移植が施行されているが,その総数は千数百例に及んでいる.移植後の生存率は3年生存ですでに80%を超えており,移植を受けなければおそらく生存率0%であることを考えれば,移植医療は胆道閉鎖症の予後を飛躍的に改善せしめた,といえよう.またドナーについても重篤な合併症を起こしたものは現在まで1例も認めていない.これは欧米の手術成績を上回っており,わが国における生体肝移植医療水準の高さを物語っている.しかし,胆道閉鎖症の成人症例などは,生体肝移植では適当なドナーがみつけられない場合が多く,脳死からの臓器提供が極めて少ない昨今の状況を一刻も早く改善させる必要がある.
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