絵で見る免疫学 基礎編・16
抗体の応用(1) イムノアッセイ法(その1)
高木 淳
1
,
玉井 一
2
,
隈 寛二
3
1ダイナボット(株)器機診断薬事業部
2栄光病院
3隈病院
pp.342-343
発行日 2001年4月1日
Published Date 2001/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905775
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アミノ酸1個の違いでも抗体は産生される
バーソンとヤローがインスリンのイムノアッセイ法を成功したのと,サンガーによるインスリンのアミノ酸配列の決定(1955年)はほぼ同時期で,まだヒトインスリンの化学合成はなされていなかった.すでに結晶化されていたブタインスリンはヒトと同じようなホルモン活性があり,また分子構造もB鎖の末端のアミノ酸1個しか異ならないので(図1),抽出ブタインスリンが治療に用いられ,多くの糖尿病患者が救われた.しかし,ブタインスリンを長期投与すると,その効果が失われる患者が多く見られ,臨床医を悩ませた.そこでバーソンはこの問題を解明するために,ブタインスリンに放射性ヨードを標識し,インスリンを長期投与して効果がなくなった患者群(グループA)と正常者群およびブタインスリンの効果がまだある患者群(グループB)にこれを投与し,血中に含まれる標識インスリンを経時的に測定した.標識インスリンは,正常群では体内で急速に分解されるが,インスリンの効果を失った群では長く血中に停滞することが判明した.これは標識インスリンがなんらかの蛋白と結合しているためであると考え,グループAの血清を電気泳動で調べると,標識インスリンは免疫グロブリン分画に見いだされ(図2),ブタのインスリンを投与することで,患者に抗インスリン抗体ができてインスリンが効果を失ったことを示唆した.
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