オピニオン
在宅医療と臨床検査技師
神津 仁
1
1神津内科クリニック
pp.971
発行日 1999年7月1日
Published Date 1999/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903924
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在宅医療という言葉が一般的になって久しいが,その実態についての理解はまだまだの感がある.特に,病院関係者の間でやりとりされる医療情報の中では,在宅医療に関する情報を目にする機会は乏しく,病院の玄関を出たらプッツリと患者さんのことは忘れてしまう,という病院勤務の医療スタッフの特性によって,いまだにカヤの外のことと思っている方々が多いのではないだろうか.
かくいう私でさえ,勤務医時代はとても多忙で,病棟医長と医局長と教育医長を兼任していた時代には,病棟のこと,医局のこと,学会のこと,論文のことなどで頭がいっぱいで,次々と仕事をこなしていくほかはなく,また続々と入ってくる入院患者さんのことで手いっぱいの状態だった.社会的に話題になっている本の1冊も読めればいいのだが,そんな余裕もなく,病院を出て家に帰れば,少しのプライベートタイムを,TVを見たりビールを飲んだりと,勝手気ままに過ごすのが精一杯で,退院後に患者さんがどんな生活をしているか,どんな苦労をしているかなど,思いもかけなかったというのが本当のところだった.ただ,私の専門が神経内科という診療科だった特殊性から,神経難病の患者さんが自宅に帰られても継続的に往診を依頼されて(プライベートな時間を割いての診療だが)多少とも携わったことから,他科の医師よりは院内から院外へと目が向いていたといえるだろう.
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