増刊号 病理組織・細胞診実践マニュアル
第I章 病理学総論
9.内分泌器・女性生殖器
手島 伸一
1
1同愛記念病院研究検査科
pp.74-78
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903456
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下垂体
下垂体は小指頭大(0.5〜0.7g,径1×1×0.7cm)で,蝶形骨トルコ鞍の下垂体窩におさまっている.発生学的には口蓋の上皮に由来する前葉(腺性下垂体)と,視床下部と関係のある後葉(神経下垂体)からなっている.前葉は主細胞,好酸性細胞,好塩基性細胞などからなり,成長ホルモン(growth hormone;GH)や各種の内分泌臓器に対する刺激ホルモンを分泌する.刺激ホルモンとしては副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotrophic hormone;ACTH),甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone;TSH),性腺刺激ホルモン〔follicle-stimulating hormone(FSH),luteinizing hormone(LH),luteotropic hormone(LTH)〕などがある.前葉から下垂体腺腫が発生し,その種類によってさまざまな内分泌症状を呈する.
好酸性細胞は成長ホルモンを産生するので,腺腫ができると成長期間では巨人症となり,青年期以後では末端肥大症が起こる.好塩基性細胞の腺腫ではクッシング(Cushing)症候群が生じる.前葉が小児期に破壊されると機能低下症,すなわち下垂体性小人症となるが,その原因はわからないことが多い.思春期以降に外傷や腫瘍で破壊されるとシモンズ(Simmonds)病となる.
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