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血栓症と遺伝子
村田 満
1
1慶應義塾大学医学部内科/中央臨床検査部
pp.185-187
発行日 1998年2月1日
Published Date 1998/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903353
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親が心筋梗塞だから自分も危ないとか,うちの家系は脳卒中が多いとかよく耳にする.ごく当たり前のことに思えるが,実はその詳細なメカニズムが解明され始めたのはごく最近のことである.多くの先進国で死亡原因の最上位にランクされている心筋梗塞は,確かに一部の家系に多発するが,環境因子の関与も大きい.本当に遺伝するのであろうか.
遺伝子の病気といえば,つい10年前までは単一遺伝子による遺伝病,例えば血友病のようにここの遺伝子に異常があるから凝固因子が欠乏するのだと明確に示されるものばかり考えられていた.そして,心筋梗塞のように多因子遺伝による疾患の遺伝子解析は複雑で,とうてい遺伝子診断などできるものではないと考えられていた.遺伝的因子のほかに後天的因子が絡み合って,まず基盤となる動脈硬化病変が形成され,そこに血小板や血液凝固因子が主役をなす血栓が生じ,血栓症が発症するのであるから,責任となる遺伝子の同定が容易であるはずはない.そして特別な脂質代謝異常を伴う冠状動脈硬化症を除き,その遺伝形式は現在なお不明である.しかし,動脈硬化,血栓形成機序の分子学的知見が深まり,これらの促進因子,抑制因子が次々とクローニングされるに伴い,これら疾患の遺伝的要素に対する理解に変化がみられてきた.
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