技術講座 病理
骨髄組織検査
松谷 章司
1
1関東逓信病院病理部
pp.143-150
発行日 1997年2月1日
Published Date 1997/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902988
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はじめに
骨髄の組織学的検査には,①胸骨骨髄から採取される吸引骨髄,②腸骨骨髄生検の脱灰標本がある.骨髄の組織学的検索の目的は血液学的異常がある場合に診断目的で行われるほかに,すでに診断の確定している白血病や貧血などの確認や治療の評価,リンパ腫のステージング,転移腫瘍の確認と原発巣の推定,不明熱の原因検索などの目的でもなされる.組織学的検索の有利な点としては,cellularityの正確な評価,骨髄巨核球数の正確な算定,ヘモジデリン量の評価,肉芽腫(結核など)の検出と鑑別診断,骨髄間質の病変,血管病変,アミロイドなどの沈着性疾患あるいは代謝疾患,転移性病変の検出と原発巣の推定などが挙げられる.このように骨髄組織診断が幅広い全身疾患に精通している病理医によってなされることは有意義である.
一方,組織学の不利な点としては個々の造血細胞の細胞学的な鑑別が十分できないこと,各造血細胞成分の量的な把握が容易ではないことなどが挙げられる.診断提出まで時間がかかることも,大きな欠点といわざるをえない.初診の白血病症例では病理医が報告をする時点では塗抹標本から診断がすでについていることもあるし,皮肉なことに治療がなされていることすらある.
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