増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅹ.技術講座
4.虫卵検査
多田 功
1
1九州大学医学部寄生虫学教室
pp.310-313
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902810
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寄生性蠕虫(ぜんちゅう)類の成虫が人体に寄生していると,その虫卵は便・尿・喀痰などに排出されてみられることが多いから,診断目的でこれを検索する.しかしこの場合,成虫は必ずしも消化管に存在するとは限らない.例えば肺・肝・血管内などにいて虫卵が消化管に出てくる場合もあるから,寄生虫の生活史を念頭に置いて検査する必要がある.さらに,虫卵が見つからなくても寄生は起こっている場合もある.これは幼虫寄生,閉所寄生,単性寄生あるいは虫卵密度が極めて低い場合などである.
蟯虫などは消化管寄生性であるが,糞便の中で見いだされることはほとんどなく,肛囲検査法が必要である.つまり,寄生虫種に応じて適切な虫卵検査が求められる.産卵門を持たない条虫類(例えば無鉤条虫)でも同様で,普通,片節の排出で気づかれることが多いが,虫卵を糞便内に見ることはまれである.
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