増刊号 血液・尿以外の体液検査法
資料
嚢胞を作る寄生虫症
澁谷 敏朗
1
1帝京大学医学部寄生虫学教室
pp.916-920
発行日 1990年5月15日
Published Date 1990/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900280
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はじめに
嚢胞とは,正常あるいは異常の,閉鎖された嚢状の構造物で,その内面は上皮に覆われ,内部に液状物を満たすものである.寄生虫による嚢胞の形成は条虫類(サナダムシ)のうち円葉目に属するものによる感染にだけ認められる.嚢胞はすべて,これらの条虫類の幼虫期に形成される.だから,ヒトが中間宿主となる場合に体内に嚢胞が形成されるのである.
円葉目の条虫類は普通,ウシやブタのような脊椎動物,あるいは甲虫やノミのような節足動物のどちらかを中間宿主とし,条虫に感染したこれらの中間宿主を経口的に摂取することにより成虫が人体に感染をきたすことが多い.しかし,以下に記するごとくある種の条虫が幼虫期に人体寄生をきたし,各種臓器に嚢胞を形成する場合もある(表21).腸管内に条虫類の成虫が寄生して虫体や虫卵の排出がみられる状態と比較すると,寄生虫による嚢胞症は診断,治療が困難である場合が多い.
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