増刊号 血液・尿以外の体液検査法
14 胸水
D.微生物学的検査
林 智恵子
1
,
菅原 和行
1
,
山口 恵三
2
1長崎大学医学部附属病院検査部
2東邦大学医学部微生物学教室
pp.730-734
発行日 1990年5月15日
Published Date 1990/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900211
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はじめに
胸水貯留の生じる微生物感染症の代表的なものとしては,胸膜炎,膿胸,血胸などが挙げられる.胸膜炎は,一般には細菌性,結核性,ウイルス性,マイコプラズマ性,真菌性肺感染症に引き続いてみられ,胸水を伴う湿性胸膜炎と胸水を伴わない乾性胸膜炎とに分けられる.膿胸は肺実質の感染に続発するものや,食道疾患,横隔膜下膿瘍から胸腔へ炎症の波及したもの,および外傷,手術後に続発するものなどがある.血胸は外傷性,続発性血胸,開胸術または肺針生検などに続発するものが主であるが,感染性疾患としては肺結核などにみられる.
胸水貯留性疾患の中で悪性腫瘍と炎症性疾患とは,胸部X線像などの所見のみでは鑑別が困難なことが多い.そのため明確な病原因子または特徴的臨床症状を呈するもの以外については,胸水検査や胸膜生検が必要となる.また胸水はその性状により滲出液,濾出液とに分けられ,両者の細胞性・液性構成成分は大きく異なる.
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