トピックス
中皮腫と腺癌の鑑別
寺田 充彦
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1東京医科歯科大学医学部病理学教室
pp.504-505
発行日 1990年5月1日
Published Date 1990/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900142
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中皮腫は胸膜,腹膜,腹腔および骨盤臓器の漿膜,まれには心嚢,精巣上体に原発する腫瘍である.中皮腫の原発巣の割合について胸膜:腹膜:心膜は85.7%:12.5%:1.8%であるという報告がある1).中皮腫は肉眼的には限局型とびまん型に,病理組織学的には上皮型,混合型,肉腫型に分類される.上皮型とは円形または立方形の上皮成分が乳頭状または管状の配列をとって腫瘍を構成しているタイプで,肉腫型とは紡錘形または短紡錘形および多形細胞から成る中皮腫を指す.混合型は上皮様細胞と肉腫様細胞両方の細胞から成るものである.その比率は日本では上皮型:混合型:肉腫型は57.1%:28.6%:14.3%であり4),米国では67%:26%:7%と報告されている1).
一般に高分化型腺癌と上皮型中皮腫の組織学的鑑別は容易ではない.特に腹膜中皮腫か,または腺癌の腹膜転移なのか,鑑別が非常に困難なときがある.肉眼的には腹膜にびまん性に腫瘍を認めたときに腺癌の転移ならば原則的に多結節状を示すが,中皮腫の場合は腹膜が全体的に腫瘍に置き換わった状態を示し,その割面は黄白色で均一である.
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