- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
基礎医学的知識と臨床的意義をわかりやすく解説した逸書
本書の上梓に先立つこと約30年前に出版された『細胞診のベーシックサイエンスと臨床病理』は,今日の細胞診における基礎的な部分の発展を予想するかのようなインパクトある内容であった.そして満を持して誕生したのが,そのリニューアル版である本書『細胞診のベーシックサイエンスと臨床の実際』である.実際,この約30年間では,医学において多くの分野で細胞生物学,分子生物学,分子遺伝学が目覚ましく,かつ,急速に進歩し,がんゲノム診療の実装化,新たな疾患概念の確立,分類の改訂,あるいは,各種がん取扱い規約の改訂,WHO分類の制定など,枚挙にいとまのない進歩が続いている.そして,これらの変化と並行して,細胞診に求められる内容も刻一刻と変わっているといえる.
本書は,こうした医療の変化と細胞診に対するニーズを的確にとらえ,基礎医学的知識と臨床的意義をわかりやすく解説した逸書であるといえる.しかも,執筆陣は細胞診や病理関連の各分野のエキスパートというとても贅沢な顔ぶれである.内容は4つの章から構成されており,中でも圧巻なのは,第1章の「腫瘍の細胞生物学・分子生物学・分子遺伝学の基礎」と第2章の「押さえておきたいがんゲノム医療」だ.第1章では,腫瘍の理解に必要な遺伝子やゲノムについて,コンパクトでありながら,とてもわかりやすく解説され,さらに腫瘍化のメカニズムや腫瘍免疫といったがんゲノム医療に不可欠な基礎知識をわずか50ページ程で得ることができる.そして,その知識が第2章の理解に大いに役立ち,コンパニオン診断,免疫チェックポイント阻害薬,がんゲノムプロファイリング,エキスパートパネルなど,がんゲノム医療の理解と実践に必要な内容が網羅され,しかも細胞検体の取り扱いについての解説は,ゲノム診療を念頭に置いた方法の標準化,精度管理に深く関連する内容である.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.