書評
標準臨床検査医学 第5版
村上 正巳
1
1群馬大
pp.880
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543209069
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臨床検査医学を学ぶ人のための教科書の決定版
臨床検査医学は,全ての診療科に関連した医療の根幹をなす学問分野で,医療のどのような専門領域においてもその知識と素養は不可欠である.診療においては通常,医療面接と身体診察を行い,必要な検査を実施し,診断,治療が行われ,治療後の経過観察においても検査が実施される.臨床検査は,画像検査とともに診療に必要・不可欠なツールである.
『標準臨床検査医学』の初版は1987年に上梓され,臨床検査医学の代表的な教科書として版を重ねてきた.2013年に第4版が刊行されてから10年が経過し,今回版を新たにしたことは大きな意義がある.この10年の間にわが国の臨床検査を取り巻く環境にさまざまな変化がみられた.2018年に検体検査の品質・精度の確保に関連した医療法等の一部を改正する法律が施行され,臨床検査の品質・精度を確保するための施設基準や方法が明確化されるとともに,遺伝子関連検査・染色体検査が一次分類に位置付けられた.また,2019年に初めて報告された新型コロナウイルス感染症はパンデミックとなり,わが国においても医療提供体制の逼迫を招くなど未曾有の事態となった.新型コロナウイルス感染症の対策において,核酸検査や抗原検査などの検査法の開発と普及,検体採取の方法,検査精度の確保,検査試薬と機器の供給体制,臨床検査に携わる人材の育成など,臨床検査の課題と役割が広く一般に理解されるようになったものと思われる.
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