臨床検査のピットフォール
—知らなかったは通用しない!—凝固線溶検査におけるヘマトクリット補正
桝谷 亮太
1
1大阪医科薬科大学病院中央検査部
pp.908-911
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208471
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はじめに
凝固線溶検査は,測定に至るまでの検体の取り扱いによって結果が変動することが知られている.現在わが国においては,日本検査血液学会標準化委員会凝固検査用サンプル取扱い標準化ワーキンググループが提唱する“凝固検査検体取扱いに関するコンセンサス”に準じて検査を行うことが推奨されている1).また,凝固線溶検査に用いる採血管に添加されている抗凝固剤のクエン酸ナトリウムは,エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid:EDTA)などのように顆粒や粉末状ではなく水溶液であるため,適切な検体量を遵守しなければ検査結果に影響が出る2,3).加えて,CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)ガイドライン(H21-A5)4)では検体のヘマトクリット(hematocrit:Ht)が55%を超える場合,クエン酸ナトリウムの濃度を調整することが推奨されている.しかしながら,Htが55%を超える場合にクエン酸ナトリウムの濃度の調整が推奨されていることは意外と知られていない,もしくは知っていても対応していないのが現状であると思われる.
本稿では,Ht値と凝固線溶検査の関係について述べるとともに,多血症患者や新生児などで遭遇する高Htの検体における補正方法について解説する.
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