FOCUS
臨床検査技師の新たな役割—未病領域での可能性
丸山 篤芳
1
,
岩崎 佐知子
2
,
吉田 博
3,4
1松阪地区医師会臨床検査センター
2富士市立中央病院診療技術臨床検査科
3東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座
4東京慈恵会医科大学附属柏病院中央検査部
pp.1298-1300
発行日 2020年12月1日
Published Date 2020/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208201
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はじめに
日常生活の利便性が向上し,超高齢社会を迎えた現在,医療が扱う主な疾患は,加齢とともに発症率が上昇する悪性新生物や,食生活・運動・喫煙などの生活習慣や嗜好を起因とする生活習慣病などの慢性疾患が中心となっている.これら疾患の多くは遺伝的素因と個々の環境要因が複雑に絡み合って発症するため,治療に要する期間や費用などが不確定で,完治が期待できないことも少なくない.
未病とは健康と病気の中間概念であり,健康からの逸脱に始まり,病気に至るまでの領域を指す.この“未病”という言葉は約2,000年前に記された中国最古の医学書である『黄帝内経』に初めて登場し,未病の時期を捉えて治すことのできる人が医療人として最高の聖人であると記述されている.日本では,1712年に貝原益軒が『養生訓』を記し,一般向けに養生についてわかりやすく解説している.これに倣えば,未病対策とは,発症前の生活習慣や体質の改善を図ることによる疾病予防,病変の拡大進展の阻止,そして再発予防などを講ずることである1).これらは慢性疾患対策が主になっている現代医療にとって重要な方法論である.さらに日本未病学会では,“自覚症状はないが検査では異常がある状態(西洋型未病)”と“自覚症状はあるが検査では異常がない状態(東洋型未病)”を併せて未病としており(図1),臨床検査は未病を評価するために必要不可欠と位置付けられている2).
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