増刊号 学会発表・論文執筆はもう怖くない! 臨床検査技師のための研究入門
7章 成功と失敗から学ぼう!
—私の成功・失敗談⑤—見極める力・取りこぼさない力の重要性
田崎 雅義
1
1熊本大学大学院生命科学研究部構造機能解析学講座
キーワード:
脳アミロイドアンギオパチー
,
質量分析
,
アミロイド共存蛋白質
Keyword:
脳アミロイドアンギオパチー
,
質量分析
,
アミロイド共存蛋白質
pp.1026-1027
発行日 2020年9月15日
Published Date 2020/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208127
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新規アミロイド共存蛋白質の同定と機能解明
2017年,筆者らは,脳アミロイドアンギオパチーにおける新規アミロイド共存蛋白質としてSRPX1(sushi repeat-containing protein 1)を同定し,本病態におけるその役割を明らかにした1).脳アミロイドアンギオパチーは,アミロイドベータ(amyloid β:Aβ)蛋白質により形成されたアミロイド線維が脳血管に沈着し,その結果として脆弱化した血管が破綻して脳出血を呈する加齢性の疾患である.超高齢社会の到来とともに,患者数は増加の一途をたどっているが,いまだ本疾患の早期診断法・予防法・治療法の開発には至っていない.そのため,本疾患の病態を明らかとし,これらの開発につなげることが求められている.
そこで筆者らは,本疾患に関与する新規分子を探索し,その機能を明らかとすることを目的として研究に取り組んだ.解析手法を簡単に説明すると,ホルマリン固定脳組織切片からlaser microdissection(顕微鏡型の装置で目的領域を分取する装置)を用いてアミロイド陽性部位を採取し,組織を可溶化後,LC-MS/MS(liquid chromatography-tandem mass spectrometry,質量分析装置)で組織に含まれる蛋白質を網羅的に解析する.そして,コントロール群と比較することで病態への関与が疑われる分子をピックアップした.無数の蛋白質が同定されたが,筆者らはそのなかからSRPX1に絞り研究を行い,本蛋白質がAβ誘導性の血管変性に関与していることを見いだした.
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