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はじめに
毎日のルーチン検査を通して抱く疑問,自身の学問的興味から抱く疑問,これらの疑問は,クリニカルクエスチョンやリサーチクエスチョンといえる.このようなさまざまな疑問を解決する,疑問に取り組むことがまさに“研究”である.しかし,“研究”は,高価な試薬,高価な装置を用いて,論文作成(英語・日本語)を行うことのみではない.
毎日行っている検査業務中に何げなく感じる「ここをこうしたら,もっと検査しやすいのに……」というような運用・環境上の疑問であっても,「その疑問を上司に相談してみて,それを実行して(変化させて)みて,そして運用・環境が変わったか,その変更によってどんな影響が出たか,部内のミーティングで報告した」というように,疑問・問題点を洗い出す(はじめに)→方策を考える(方法・材料)→実行する(結果)→影響を考える(考察)という形で捉えてみると,これはまさに“研究的思考”そのものである.この研究的思考をすでに多くの人が経験しているはずである.さらに,部内ミーティングで報告までしていたとすれば,それは,いわば論文や学会発表と同様に自身の考えを他者に論理的に伝えることまで行っているのである.
“研究”を始めるに際しては,「何か課題を見つけなければ」と焦るのではなく,普段感じる疑問を大切にすることがとても重要であると考える.しかし,疑問の解決に至った過程(成果)を公開する方法,つまり部内報告→学会発表→論文発表には公開の範囲(影響)と公開の時間に違いがある.公開の範囲は,部内報告では特定の施設内の人,学会発表は学会会場に来た人であるが,論文発表は多くはインターネットで不特定多数の人(もちろん興味のある人しか読まないが)に届けられる.さらに,公開の時間については,部内報告や学会発表は限られた時間内であるが,論文,特に英語論文などはPubMed上に半永久的に公開されてしまう.
以上から,論文発表までを視野に入れた場合,論理性がとても重要になる.論理性を担保するためには,疑問を解決する手段,研究のデザイン,研究の成果をどのような形式の論文で発表するかについて,知識を得ておく必要がある.本稿では,研究デザインと論文形式の種類について主なものを概説する.
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