臨床検査のピットフォール
セロファン厚層塗抹法(加藤氏法)による虫卵検査のピットフォール
石井 明
1
1浜松医科大学感染症学講座ウイルス学・寄生虫学分野
pp.338-340
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206408
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はじめに
直接塗抹法には,少ない糞便(通常3〜5mg)を扱う薄層塗抹法や,やや多めの糞便(約20mg,マッチ棒の頭程度)を扱う厚層塗抹法がある.薄層塗抹法は大量の虫卵を排出する日本海裂頭条虫症の検査には適用できるが,線虫類などで寄生数が少ない場合などは向かない.厚層塗抹法は,特別な処理をせずに操作は簡単ではあるが,糞便がやや多いため不均一な厚さになりやすく,検鏡困難になる場合がある.
セロファン厚層塗抹法(加藤氏法)は,直接塗抹法よりもさらに多量の糞便(約70mg)を迅速に検査する目的で考案され,カバーグラスの代わりにセロファン紙が用いられている.適度な乾燥により便が透明化し,虫卵が見やすくなることが特徴である.セロファン厚層塗抹法は手技も簡単で,同量の糞便であれば,ホルマリン・エーテル法〔MGL(medical general laboratory)法〕などの集卵法よりも検出率が高く,虫卵の特有の見え方を覚えれば,一般検査の現場に適した検査法と考えられる.セロファン厚層塗抹法の手技および問題点について概説する.
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