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安全な輸血療法を実施するために,正しい輸血検査の実施が必要である.ABO血液型,Rh(D)血液型の抗原や抗体に関する知識と検査に必要な試薬,手順のみではなく,その検査法の原理や利点,特性を十分把握する必要がある.A,B抗原はほとんどの細胞に発現している糖鎖抗原で,第9染色体上にある糖転移酵素により作られる.オモテ検査は抗A,B試薬を1〜2滴ずつ滴下して,試験管法は3%,ガラス板法は10%血球浮遊液を用いてよく混和して,2分以内に判定する.ウラ検査は,血清中のIgM型の抗A,抗B抗体を検出するが,O型ではIgG型も存在して,ABO不適合妊娠による新生児溶血性疾患の原因となる.Rh抗原は,第1染色体上にある遺伝子で作られる蛋白である.D抗原の変異型は,weak D,partial Dや抗原量が非常に少ないDel型などがある.
交差適合試験は,ABO不適合と,37℃で反応する,臨床上意義がある不規則抗体を検出できる方法で行う.不規則抗体は,輸血や妊娠によって産生されるA,B抗原以外の血液型抗原に対する抗体で,アルブミン,LISS(low ionic strength solution),ポリエチレン・グリコール(polyethylene glycol:PEG)などを添加,反応時間を10〜15分に短縮してIgG型抗体を検出する間接抗グロブリン試験や酵素法を用いる.スクリーニング検査では2〜3種類,同定検査では10〜12種類のパネル血球を使用する.抗体は抗原性が強いRh系に対する抗E抗体などが多く検出されるが,日本人の約9割はDiago血液型a抗原が陰性のため,抗体を産生する可能性も高い.外国製のパネル血球セットでは,日本人に多いDiago血液型に対する抗体を検出できないこともある.
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