エトランゼ
手を上げないのはなぜ
常田 正
pp.1139
発行日 1987年9月1日
Published Date 1987/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204273
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西ドイツの小学校での話である.いつもテストでは満点を取る日本人の頭の良い子が,学年末の総合評価で3点をつけられた.母親は納得しかねたので直接担任教師に問いただしたところ,教師はテストの点は良いが教室の中で何も発表してくれないからだと答えた.そういえば,アメリカの学校でも小学生から大学生に至るまで教室の中でみんな手を上げて質問したり,答えたり,発表したりしている.小学生でも中学生でもよく手を上げ,指されると喜々として答える.答が間違っていてもへっちゃらである.稚拙愚劣な質問も平気でする.
日本の学校でそんなことをする生徒はおっちょこちょいだと軽蔑される.秀才は黙々とノートを取り,知識を蓄え,試験の時には蓄えた知識を答案用紙の上に放出する.アメリカ人の教師が初めて日本の学校の教壇に立つと,手をあげない,答えない,質問もしない生徒達の無気力さに授業の進めようがなくなるという.
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