りんりんダイヤル
リコールの細胞診
山岸 紀美江
1
1国立がんセンター
pp.397
発行日 1987年4月1日
Published Date 1987/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204060
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問 リコールの細胞診が提出されることがしばしばあります.時々,細胞が少なく,判定が不可能なことがあります.集細胞を含めて何かよい方法をお教えください.(埼玉 K子)
答 リコール細胞診は,他の臓器細胞診と異なる,以下の特徴と困難さをもつ.①検体量は少ない.②検体外観は,水様,無色透明で放置しても変化しない.99%は水分で,乾燥物質は約1%であり,その3/4は無機質,1/4は有機質である.蛋白は血清の1/200〜1/600の含量である.血性,フィブリン析出,混濁の見られるのは病的である.③細胞数は少ない.正常成人で3〜5/mm3の小リンパ球が見られ,まれに赤血球,組織球,白血球,上衣細胞が少量見られる.生後1か月未満では単球優勢で10±8/mm3見られる.これらの細胞種のほか,数の増加の見られるのは病的である.④リコールへの細胞剥離から検体採取までの時間の長い場合,細胞変性の進行していることがある.⑤遠沈しても沈渣を肉眼で認められないことが多い.⑥検体は低蛋白のため,スライドグラスへの細胞付着は微弱である,⑦リコール中へ腫瘍細胞が見られるのは,リコールに出やすい部位に腫瘤が存在することと,低分化のものほど出やすいといわれている.ただし,高分化の腫瘍はかりに出現しても,正常細胞との鑑別が難しいことがある.
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