検査を築いた人びと
人脳用ミクロトームを完成させた ベルナールト・フォン・グッデン
酒井 シヅ
1
1順天堂大学医史学
pp.856
発行日 1986年7月1日
Published Date 1986/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203785
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脳および脊髄の役目が正確にわかってきたのは,それらを連続標本で見ることが可能になってからのことである.その方法を考案したのはドイツのB.シュティリング(1810〜1879)であった.彼が1842年に一片の脊髄を凍結させ連続した薄片を作ったことから,この方法が広く行われるようになったのである.その後さらに固定法,包埋法に工夫がこらされ,製作技術は大いに向上したが,いまここで話題にするグッデン(1824〜1886)は1876年に人脳全体を薄く切ることのできるミクロトームを完成させた.これで人脳の構造についての研究が一段と進んだのである.
グッデンはオランダの国境に近いクレープに生まれ,ボン,ベルリン,ハレの各大学に学び,1848年に医学士となり,精神医学を専攻した.19世紀の脳の形態学がドイツで大いに発展したが,その研究が多くの精神医学者の手に成ったことは注目に値する.彼らは精神異常を精神の病気として認識した19世紀前半のフランスの医学者のあとに登場して,その病態を脳および脊髄の形態的変化としてとらえようとする学派を築いたのであった.
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