検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
便潜血反応は消化管疾患診断に必要か
渡部 和彦
1
,
岡本 公夫
1
,
宮崎 博実
1
1鳥取大学医学部第2内科
pp.216-220
発行日 1983年3月1日
Published Date 1983/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202708
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便潜血反応が消化管よりの潜出血を簡便に診断可能な検査として登場して久しいが,消化管出血の有無を診断するにとどまらず,消化性潰瘍をはじめとする消化管の出血性病変のスクリーニングテストとしても応用され,今日までその有用性についていく多の検討がなされてきている.本法はヘモグロビンの有するペルオキシダーゼ作用を利用した非特異的血液検出法であるため,被検者が通常食摂取時には人以外のヘモグロビンはもとより,ヘモグロビン以外の物質にても反応が陽性となることがある.また,消化管病変よりたえず出血があると限らず,出血量が微量に過ぎたる場合には陰性に終わることがある.
以上のごとく便潜血反応はその精度に問題が多いため,消化管特に上部消化管の出血性病変のスクリーニングテストとして一般に余り重要でないと解釈されている.ただし,近年欧米での下部消化管,特に大腸癌集検について本法を用いた良好な成績が紹介されるに及び,わが国においても便潜血反応による大腸癌スクリーニングの可能性が検討され始めるなど,本法の消化管疾患スクリーニングテストとしての価値が再評価されつつある.
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