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肺循環は低圧系であるため,以下述べるように右心もしくは左心機能を鋭敏に反映する.正常人においては,肺血流は重力の影響により上部肺ほど少なく,下部肺ほど増大する特性を有する.左心機能不全ではその上下の血流差が少なくなり,重症例では逆転するといわれている.胸部単純写真で上下肺野の血管影を比較することによって,弁膜疾患などの重症度を判定しているが,これもこの現象に基づいている.これをさらに進めて,99mTc-MAAを用いて核医学的に肺血流分布を求め,上下肺の放射能比より判定する方法もある.99mTc-MAAは50μm程度の粒状物質を99mTcで標識したもので,静注後,右心系で混和され,肺血流分布にしたがって肺内に分布し,肺毛細管レベルでトラップされる.したがって,この分布の程度を上,下肺で放射能の比として測定すれば,上,下肺の血流分布を知ることができる.重症例では上/下比は1.0以上となる.この方法は簡便であるが,もっと詳細に肺血流分布異常を知るため,Westの肺血流モデルを考慮に入れた検索法が試みられている.
肺血流分布は肺動脈圧,肺静脈圧,および間質圧が複雑にからみあった四つのzoneからなっている.zone Iは,肺胞内圧>肺動脈圧>肺静脈圧で規定されるzoneで,正常人では肺尖部にわずかに存在するといわれている.肺胞内圧は大気圧にほぼ等しいため肺動脈圧が上昇すると当然ながら,このzone Iは消失する.zone IIは,肺動脈圧>肺胞内圧>肺静脈圧の関係にある肺野で,上部肺の大部分を占め,このZoneでは血流の上下方向の傾斜が大きい.zone I とZone IIの境界,つまりzone IIの上端の高さ(右室からの)は肺動脈圧を表わしている.肺動脈圧が上昇するとzone IIの上端は肺尖を越えてしまうので,zone IIの上端を同定できなくなるが,zone IIの傾斜を外挿することによりその上端を推定することができる.次に,zone IIIは主として中肺野に存在し,肺動脈圧>肺静脈圧>肺胞内圧の関係により規定されている.つまり,zone IIIでは肺動脈圧と肺静脈圧の圧差で血流が流れているが,重力の影響により血流は下肺野で多い.zone IIIの上端(zone IIとIIIの境界)は肺静脈圧の上昇によって上昇する.zone VIは,主として肺底部に存在するが,ここでは血流はかえって減少する,これは肺の重さによる間質圧の上昇によるものであり,間質に浮腫が生じたりすると,このzoneIVの上端が上昇する.なお各zoneの境界では単位肺当りの血流量が不連続的に変化する.
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