技術講座 生化学
カルシウムの測定法
浅井 孝道
1
1虎の門病院臨床化学検査部
pp.31-37
発行日 1982年1月1日
Published Date 1982/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202421
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カルシウム(Ca)は,他の電解質とともに生体内にひろく分布するが,その中でも全Ca量の99%はリン酸とともに骨,歯などの硬組織に存在している.血液では血球中にほとんど存在せず,血漿で約2.5mmol/l(Caは2価の陽イオンであるので当量で表わすと5mEq/l,または10mg/dl)の濃度である.血漿中のCaのうち生理作用に関与するのはカルシウムィオン(イオン化カルシウム:Ca++)であり,細胞膜の透過性,神経・筋肉の興奮性,血液凝固,酵素反応の賦活化などの役割をはたしている.その他は生理的に不活性とされる蛋白結合型及び化学結合型などの存在様式となっている(図1).
血清濃度の範囲は狭く,総Ca2.20〜2.55mmol/l,Ca++約1.0〜1.3mmol/lで恒常性が成立されている.この恒常性に関与する体液性調節因子は,副甲状腺ホルモン(PTH)と活性型ビタミンD(1,25(OH)2D3)及びカルチトニンであり,血液Ca濃度の上昇にはPTHと1,25(OH)2D3が,またその減少にはカルチトニンが作用している.このようにして血液Ca濃度は一定に保たれており生理的変動も0.15mmol/lと非常に小さい.よって臨床化学検査室での血液Caの定量には高精度の技術が要求され,今日に至るまで数々の測定法が考案されてきた.
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