マスターしよう基本操作
血球浮遊液の作り方—緒方法を例として
鈴田 達男
1
,
岩倉 伸子
2
1東京医科大学血清学
2東京医科大学病院中検
pp.915-922
発行日 1979年11月1日
Published Date 1979/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201949
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血清学的検査では赤血球の浮遊液は,日常頻繁に使用される試薬である.ちょっと思いつくだけでも血液型の逆判定(ヒト標準A,B型血球),ポールバンネル反応,補体結合反応,寒冷凝集反応,ローズまたはヘラー反応(ヒツジ血球),抗ウイルス抗体測定の血球凝集抑制反応;HI(ガチョウまたは初生ヒナ血球)などいずれも血球の浮遊液を用いた反応である.なかでもヒツジ血球は最も血清学的検査になじみの深い血球であり,また血液型の逆判定の場合には,血球の濃度は目分量で2%に作製しても定性的に調べる限りは差し支えないが,上記の反応の中には定性試験であっても血球の濃度をかなり正確に規定しないと,精度管理上好ましくないものもある.
そこで今回は,日常よく使用されている緒方法の感作血球浮遊液の作り方についてごく基本的な操作を解説するとともに,その濃度を一定にするために,我々の検査室で行っている工夫を中心にして説明したい.緒方法で血球の濃度がなぜそのようにやかましく規定されなければならないかというと,周知のとおり緒方法では,2単位の補体希釈液を毎回作製することになっているが,この価が完全溶血を指標とする場合には,かなり変動する.感作血球と補体の問題だからその都度合っていればよさそうに思えるが,そうはいかない.すなわち,薄い血球を使ったときには,それを溶血させるに必要な補体量は少なくて足り,逆に濃い血球を使ったときは補体を余計必要とする.したがって血球濃度が異なると1単位の尺度そのものが毎回狂うことになるので,精度管理が著しく困難になるのは当然と言えよう.
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