技術講座 血清
緒方法
松永 欣也
1
1大阪府立万代診療所
pp.1083-1089
発行日 1986年9月1日
Published Date 1986/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203842
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梅毒の血清反応は,その病原菌とは直接関係のないカルジオライピン,レシチンというリン脂質を抗原に使用していることが,他の感染症の血清反応にない特徴である.この,一見非特異反応的なこの検査も,梅毒を鋭敏に検出できるし,その抗体の推移は臨床症状とよく一致するので,病原菌とは特異的なトレポネーマを抗原とする検査法が普及した現在でも,梅毒の診断に欠かすことはできない.
この梅毒の脂質抗原による検査法のうち緒方法は,今世紀の初めに創案されたワッセルマン反応の伝統を引く補体結合反応に基づき1949年に緒方,徳永らにより抗原減量法を応用して創案された方法で,抗原と抗体の最適比を最も端的にとらえることができるよう工夫されていることが特長である.したがって,鋭敏度にも優れ,厚生省監修『微生物必携』に収載されている,我が国を代表する梅毒検査法である.しかし,この優れた方法も赤血球や補体などの生材料を使用するため,これらの供給と管理体制が難しいことや,その操作が煩雑で時間がかかること,かなり厳重に調整しないとよい成績を得ることができないことなどの理由でその実施が敬遠される傾向にある.それでも臨床医家の間では,いまだにワッセルマン反応に対する信頼は厚く,その成績を求められることが多い.一方,免疫血清学の基本技術としての補体結合反応は大切で,その修練の場として緒方法を実施することが最も適している.
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