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エスバッハ氏法,末吉氏法,ペーヴィ・隈川・須藤氏法,トリブレ反応,岡・片倉培地,プライス煮沸試験,Dubos培地,高田反応,グロス反応,村田法,井出法,カーン氏法,ハーゲドルン・イエンセン法あるいは七條反応など,昔なつかしい名前だが,今の若い人たちはおそらくやったことも,見たこともない検査.光電光度計も未知の時代.現在と比較すれば検査の種類も範囲も少なく狭かったが,機械と言えば,顕微鏡と遠心器,孵卵器ぐらいであとは試験管とピペット,せいぜいビュレットなどのすべて手仕事.私が7年の療養生活に別れを告げ,社会生活復帰のために選んだ職業として国立療養所の検査科に職を得たころ,戦後間もない昭和24年のことである.それでも新しい職場は,1,000床を超える大療養所のこととて結構検体の数は多く,5,6人の技術者が毎日忙しく働いていた.まだ法定の臨床検査技師などの資格はなく病理細菌助手という職名で,解剖の介補から,病理,細菌,血液,血清,一般検査に至るまで結構広い範囲で金井先生の本と首っ引きで悪戦苦闘していた.とは言え変革の始まろうとしていた時期でもあり,多くの実験を行う機会にも恵まれ苦心もあったがおもしろいことも多かった.
特に結核療養所であるため,結核菌検査の数は圧倒的に多く,チールネルゼン塗抹検査,集菌法(この鏡検は見にくくて顕微鏡に弱い私は時々眼を回して,閉口していた),培養など,大変な数だった.折しも岡・片倉培地から小川培地に移るころで,結核研究所の小川先生に直接指導を受けるため半年間通い,その間に一般検査の教えも乞い,浅学の私には大変勉強になったが,帰ってくるや早速小川法を実施することになったのである.
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