臨床検査技師のための 生物学
生殖
和田 優
1,2
1大東文化大
2大東医学技術専門学校
pp.24-27
発行日 1974年1月1日
Published Date 1974/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200339
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個体の寿命にはおのずから限度があるので,生物は自己と同じ個体を作って,その種族を維持している.このような現象を生殖(reproduction)という.生物は生殖によって,子孫の繁栄と,優秀な子孫を得るという2つの目的を果たしている.
下等な生物はふつう分裂によって個体数を増している.これを無性生殖(asexual reproduction)という.この方法で作られた新個体は遺伝的にはすべて母体の持つ形質と同じ形質を持つことになり,突然変異の起こらないかぎり進化はない.ところが,高等な生物で生殖細胞を作り,てれが融合することによって初めて新個体になる.このような生殖法を有性生殖(sexual reproduction)という.この方法では,生殖細胞は減数分裂によって単相(n)の染色体をもつことになるし,またこの時には遺伝子の交換も起こる(6月号図5参照).こうして作ちれた2個の生殖細胞が融合して,新個体(複相;2n)が作られる.したがって,遺伝的に親と異なる個体もできるので,新個体には両親より劣るものもあれば,すぐれたものもあることになる.これらの新個体に淘汰が働くと,ここに生物の進化が起こることになる.
無性生殖の種類には,分裂(二細胞分裂),出芽胞子形成などがある*.これらについては,すでに,6月号に述べてあるので,ここでは有性生殖を中心にして取り扱うことにする.
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