臨床医からの質問に答える
尿中抗原検査のピットフォールを教えてください
西山 宏幸
1
1駿河台日本大学病院臨床検査部
pp.566-569
発行日 2014年6月1日
Published Date 2014/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104298
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はじめに─尿中抗原検査の背景
感染症の原因微生物の迅速な検出は,感染症の診断・治療に際して必須の事項である.近年,従来の塗抹染色や培養検査に代わって,免疫学的方法を用いた病原菌の検出技術が開発されてきた.検出のための検体を感染巣から直接採取するのではなく,尿中に出現する感染微生物抗原を検出する簡便な方法も開発された.
市中肺炎の原因菌として頻度の高い肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)や,集団感染を発生する可能性のあるレジオネラ菌(Legionella pneumophila)はともに重症肺炎をきたしやすい.そのため,早期の病原菌の同定が必要になる.この微生物の検出のためにPOCT(point of care testing)の一種である迅速診断キットとして,イムノクロマトグラフ法を用いた尿中抗原検出キットがある.検出感度・特異度ともに優れたキットであり,臨床的有用性が確認されている.
表1に,肺炎球菌・レジオネラ菌用尿中抗原迅速診断キットの一覧を示す1).これらのキットの利点として以下の項目が挙げられる2).
①検体としての尿は,患者に負担をかけずに簡単に採取できる.
②操作が簡便で判定がわかりやすく,簡単なトレーニングで使用することが可能である.
③迅速に結果が得られる(15分間).
④腔内常在菌の混入の影響を受けない.
⑤電気,水道,ガスなどのインフラがない場所でも使用することが可能である.
⑥測定に使用する試薬や消耗品の管理が容易で,メンテナンスフリーである.
このなかでも③は最も大きな利点であり,治療期間の短縮や救命率の向上がもたらすなど,診療への貢献度は極めて高い.
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