Laboratory Practice 〈病理〉
スプリット・サンプル法の口腔領域への応用
深津 晶
1
,
市村 真奈
1
,
久山 佳代
2,3
,
松本 敬
3
,
斎藤 隆明
4
,
遠藤 弘康
5
,
伊藤 孝訓
5
,
山本 浩嗣
2,3
,
福本 雅彦
1
1日本大学松戸歯学部歯科臨床検査医学講座
2日本大学松戸歯学部口腔病理学講座
3日本大学松戸歯学部付属病院病理診断科
4千葉西総合病院病理科
5日本大学松戸歯学部歯科総合診療学講座
pp.1172-1176
発行日 2013年11月1日
Published Date 2013/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104097
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はじめに
口腔粘膜細胞診は近年,口腔癌検診の需要拡大とともに急速に普及してきている.しかし,咀嚼にかかわる口腔粘膜は角化した性状を有し,また,細胞と唾液が同時に採取されるため,スライドガラスに塗抹される細胞量は非常に少ない.筆者ら1)の計測によると,口腔粘膜細胞診検体の細胞密度は子宮頸部検体の56.4%であり,両者には有意差が認められた.
液状化細胞診(liquid based cytology,LBC)は,子宮頸部検診の精度管理を目的とした標本作製の標準化を実現する手法として近年,急速に普及してきた2).LBCの利点のなかでもサイトブラシに遺残する細胞や浸漬固定時に剥離する細胞の軽減化は,口腔粘膜細胞診の精度管理に非常に有利と考える.しかし,口腔粘膜細胞診検体は他臓器と比較していまだに非常に少ないため,口腔領域のためだけに新規に機器を購入する環境を整えることが難しいのが現状である.
そこで筆者らは,用手法によるLBCの1つであるTACASTM(thinlayer advanced cytology assay system)法(医学生物学研究所社)をスプリット・サンプル法で行う試みを開始した2).筆者らは直接塗抹法では細胞判定を導くことができなかったが,TACASTM法で細胞判定し得た扁平上皮癌および尋常性天疱瘡を経験した.本稿では,スプリット・サンプル法の口腔粘膜細胞診への応用の可能性を検討する.
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