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1882年にコッホが結核菌を発見し,1944年にワクスマンらがストレプトマイシンを抽出,その後次々と有効な薬物が登場し,結核による死亡者は20世紀後半には激減した.それでも潜在性結核感染者は世界人口の3分の1,わが国でも70歳以上の高齢者では半数を超える.毎年世界で約880万人が結核に罹患し,約140万人が死亡する,マラリアと並ぶ世界最大の感染症である.その9割を超えるアフリカ,アジアの高まん延地域の罹患率は,10万人当たり100人以上である.先進国における大都市では,人口の集中,貧困,過労などのリスクにより罹患率は高い.ではわが国はどうなのか.第二次世界大戦後はそれまで200人を超えていた罹患率が急激に低下したが,それでも欧米には及ばず10万人当たり18と中まん延地域である.高齢化,HIV感染者の増加,外国人の増加などが結核の罹患率低下の障害となっている.したがって,誰でもどこでも遭遇するチャンスがある.しかも最近は多剤耐性菌という厄介な問題がある.
本書は,最近の結核医療のめまぐるしい変遷に対応すべく改訂された第4版である.疫学および細菌学的に敵(結核菌)の策略を知ることができる.そして,patients’ delayとdoctors’ delayを防ぐコツや新規診断技術の解説によって早期診断の目を養える.また治療に至ってはその基本および新規薬剤の解説と,耐性菌に対する治療や院内感染対策に至るまで,微に入り細に入り目の前で教えてもらっているかのようである.各項目には最初にtake home messageとしてのポイントと,最後に将来への展望が語られている.巻末の症例提示を見ると,結核菌がいかに身を隠すことに秀でた細菌であるか実感させられる.
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