Laboratory Practice 〈生理〉
早期興奮症候群の心電図その見分け方は?
立田 顕久
1
1東京女子医科大学病院中央検査部
pp.1458-1462
発行日 2012年12月1日
Published Date 2012/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103794
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はじめに
早期興奮症候群は,房室伝導に通常の刺激伝導系とは異なる伝導路が単一ないし複数存在するため,通常より早く心室に興奮が伝わるもので,心電図検査ではPR間隔短縮(<0.12秒)を認める.こういったものには,Wolff-Parkinson-White症候群(以下,WPW症候群)のKent束やLown-Ganong-Levine症候群(以下,LGL症候群)のJames線維が有名であるが,他にも後述する束枝―心室間副伝導路など数種の副伝導路があり,これらPR間隔が短縮する病態を一般的に早期興奮症候群という.この症候群は安静時に心電図上,早期興奮を示す顕性と示さない潜在性がある.さらに発作性上室性頻拍を伴うことがあり,動悸,めまい,失神など自覚症状は多岐にわたる.合併する基礎心疾患も多く存在し,Ebstein症,肥大型閉塞性心筋症,僧房弁逸脱症,心室中隔欠損症などがありEbstein症では約25%と高頻度にWPW症候群を合併するとの報告1)もあるため超音波検査などで合併症の確認も必要である.また,WPW症候群で心房細動を合併する例では突然死を招く危険があり,ハイリスク群として注意が必要である.このように早期興奮症候群は無症状で治療を必要としないものから非常に重篤な状態に至るものまで,極めて幅の広い臨床像を有する.近年,カテーテルアブレーションによる根治療法が進み,不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)でWPW症候群はClassI・IIaの適応となっている.
本稿では,治療の選択に必要な病態や副伝導路の部位推定を心電図上から見分けるポイントについて概説する.
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