増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典
Ⅷ 薬物検査
抗菌薬
詫間 隆博
1
,
小司 久志
1
,
吉田 耕一郎
1
,
二木 芳人
1
1昭和大学医学部臨床感染症学
pp.953-955
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103323
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検査の概要
一般に抗菌薬は安全域の広い薬剤が多いこともあり,血中濃度測定が行われることは少ないが,アミノグリコシド系薬,およびグリコペプチド系薬については安全域が狭く,血中濃度モニタリングが行われる.通常の薬剤は人体に作用するため,薬物の濃度推移〔薬物動態(pharmacokinetics,PK)〕で個体差をみるのと同様に,薬物の作用(効力,副作用)〔薬力学(pharmacodynamics,PD)〕も個体差のみを考えていればよいが,抗菌薬は菌に作用するため,効力に関しては感染症の原因菌ごとに異なり,感染局所の薬物濃度に関連する.一方で副作用については患者に依存するため,血中濃度に関連する.このように,薬物動態と薬力学を合わせたPK-PDを考える場合,抗菌薬の場合は効力面と副作用面とを分けて考える必要がある.
アミノグリコシド系薬とグリコペプチド系薬は組織移行性が不良のものが多く,考え方としては副作用が起こらないぎりぎりの濃度まで血中濃度を上げて,効果が出るのに期待するというのが基本的な考え方になる.しかし,血中濃度や尿中濃度は高くなるため,感染性心内膜炎では分割投与が考慮され,尿路感染では減量も許容範囲である場合もある.
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